USB-Cケーブルが「動く/動かない」で割れるのは、5つの仕様が独立して決まるから——というのは別記事で書いた。けれど、その手前にもっと素朴な問題がある。そもそも、買う前にそのケーブルの仕様が分かるのか。
これは観測しやすい。商品ページに「何が書いてあるか」を数えればいい。人手では追いきれないので、楽天市場の売れ筋USB-Cケーブルを横断で機械集計し、規格・転送速度・給電・映像対応を明記しているかどうかを拾った。順位づけではない。表記がどれだけ揃っていないかの定点観測だ。
数字の読み方を、沼の住人として冷静に。
- 給電(W)は比較的書かれる。USB-Cケーブルが「充電ケーブル」として売られる文脈が主だからだ。65W・100W・240W——ここは買う前に分かりやすい。
- 転送速度(Gbps)と映像出力は、書かれないことが多い。下の図の通り、数値で速度を明記している商品は売れ筋でも一部にとどまる。「データも映像もいける1本」を探しているのに、肝心の速度・映像が商品ページから読めない、という状況が普通に起きる。
- 規格名は半分ほどが書く。ただし規格名だけでは速度が一意に決まらない。「USB 3.2」は Gen1=5Gbps / Gen2=10Gbps / Gen2x2=20Gbps のどれかで、表記が “USB 3.2” 止まりだと結局速度は確定しない。
- 「高速」「急速充電」だけで数値が無い商品も一定数ある。語感はあるが、確かめようがない。
要するに、同じ「USB-Cケーブル」という棚でも、買う前にスペックが読めるかどうかは表記次第で、揃っていない。これは即決を冷ます方向の事実だ。安いから・速そうだから、で1本掴むと、用途で外す。
じゃあ、どう確かめるか
表記が揃わない市場で、確かめる手は2つ。
- 本体の刻印を読む。認証ケーブルは速度(5/10/20/40/80 Gbps)と電力(60W/240W)をロゴで併記している。箱が無くても本体から規格が読める。読み方はUSB-Cケーブル7本の比較記事の「刻印の読み方」図にまとめた。
- 商品ページのスペックを判定する。私たちが配っている Chrome 拡張 cable-checker は、Amazon・楽天のページ上で USB-C ケーブルの規格バッジを表示する。まさにこの「表記が揃っていない」問題に対して、ページ側で規格を冷静に確認するための道具だ。この記事は、その拡張が必要とされる市場の実態側の裏付けでもある。
この記事について
これは定点観測で、月次でデータを取り直して上の図を更新する(最新の取得日は図の下に明記)。市場の表記がよくなれば明記率は上がるし、新規格(USB4 v2 / 80Gbps)が増えれば内訳も動く。その変化そのものを観測し続けるのが、この記事の役割だ。
memento mori 視点で言えば、ケーブル1本も「デスクで死ぬまで使う」道具になり得る。表記が読めないなら、即決せず、刻印か拡張で確かめてから。それだけで、押入れ送りのケーブルは確実に減る。